知っておきたい!賃貸契約の仲介手数料と振込手数料について

費用・お金

2020年2月28日更新

筆者:椎名 前太 住宅・不動産ライター/宅地建物取引士

椎名 前太

住宅・不動産ライター/宅地建物取引士

アパートやマンションなど賃貸物件を借りる際に、家賃以外に必ずかかる諸費用。その中でも賃貸契約にかかる仲介手数料と、入居後に家賃を振り込む場合の振込手数料に関しては、分からないことが多いのではないでしょうか。

そこでここでは、二つの手数料の仕組みや相場などくわしい内容を解説します。

記事の目次

  1. 賃貸の仲介手数料について知りたい
  2. 家賃の振込手数料について
  3. まとめ

賃貸の仲介手数料について知りたい

そもそも、仲介手数料はなぜ支払う必要があるのでしょうか。そしてその金額は、なにを根拠に決められているのでしょうか?
まずはここから説明します。

賃貸物件の仲介手数料とルールについて

世の中には、膨大な数の賃貸物件が存在します。
アットホームの掲載数だけでも120万件以上(2019年12月時点)。もちろん、この中から地域や間取りなど条件を選択して最適な物件を探し出すことができますが、その後の問い合わせ先・相談窓口は不動産会社になります。

不動産会社は賃貸物件提案のプロ。理想の物件探しだけでなく、引越し方法から周辺の商業施設の様子まで、住み替えにかかわる様々な情報を提供してくれます。

また、せっかく理想の物件が見つかっても、借主(部屋を借りている人)が自分で貸主(部屋を貸している人)と直接契約交渉をするのは難しいという人がほとんどでしょう。そこで借主と貸主の間に立って物件探しから契約締結までをフォローしてくれるのが不動産会社なのです。

貸主と借主を仲介してくれたことに対して仲介手数料が発生します。その金額は「家賃の1カ月分以内+消費税」と上限が定められています。

仲介手数料は法律でどう定められている?

不動産会社が受け取る仲介手数料は、宅地建物取引業法によって次のような上限があります。

借主が支払う額:家賃の0.5カ月分以内

貸主が支払う額:家賃の0.5カ月分以内

この上限額を超える仲介手数料を受け取った不動産会社は法令違反となります。ただし、依頼者(借主と貸主)の承諾がある場合は、いずれか一方から家賃の1カ月分以内を受け取ることも可能です。
つまり、借主と貸主から受け取る仲介手数料の合計が家賃の1カ月分以内であれば、それぞれが支払う手数料の割合に制限はありません。

なお、この報酬額には別途消費税がかかります。

家賃別 仲介手数料の目安(消費税込・家賃の0.5~1カ月分)

家賃 仲介手数料
3万円 1万6500円~3万3000円
5万円 2万7500円~5万5000円
8万円 4万4000円~8万8000円
10万円 5万5000円~11万円

仲介手数料は、あくまで賃貸借契約の成約に対するものです。したがって、賃貸借契約が成立するまでは原則として支払う必要はありません。

また、不動産会社が貸主である場合など貸主と借主の間に仲介会社が入らない場合は、仲介手数料は発生しません。

家賃の振込手数料について

現在、賃貸物件の家賃を支払う手段として管理会社や貸主へ直接手渡しするケースは稀で、銀行口座へ振り込む方法がメインです。
では、その振込手数料は借主と貸主のどちらが支払うべきものなのでしょうか。

家賃の振込手数料は借主の負担?

家賃の振込手数料に関しては、基本的に入居前に交わす「賃貸借契約書」に記載されています。そこに「振込手数料は借主負担とする」といった文言があれば、そのとおり借主が支払わなければなりません。
一般的には、このように契約によって貸主ではなく借主が負担することが多くなっています。

また、賃貸借契約書に振込手数料に関する文言がない場合は、以下の民法の条文によって借主負担となります。

第485条【弁済の費用】

「弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。」

弁済の費用とは、債務者(借主など)が債権者(貸主など)へ家賃を支払うために要する交通費や宿泊費などの経費です。これには振込手数料も含まれます。
つまりこの条文では、「振込手数料に関して特別に契約を交わしていなければ、それは借主の負担となる。ただし、貸主の都合で手数料が増えた場合は、その増額分は貸主負担となる」としているのです。

振込手数料の金額は大体どれくらい?

借主負担が一般的な振込手数料。その相場はいくらくらいなのでしょうか。

仮に自分の都市銀行の口座からATMを利用して他の銀行の口座へ現金で3万円以上を振り込んだ場合、手数料の相場は660円(消費税込み・2019年12月現在)といったところです。家賃は毎月定期的に支払うもの。1回の振込手数料が660円ならば、1年間で約8,000円になります。

振込手数料が変わる要因にはどんなものがある?

1年間で8,000円という金額は、多くの人にとって微々たるものではないはずです。少しでも安く済ませたいのではないでしょうか。
振込手数料は、おもに次の3つの要因によって大きく異なります。

金融機関

振込手数料は、振込先が「自分と同じ金融機関の同一支店」、「他支店」、「他銀行」という順で高くなる傾向があります。
つまり、同じ銀行内でやり取りする方が安くなるということです。

振込方法

振込方法は、一つの銀行であっても複数あることがほとんどです。一般的には、「窓口」、「ATM(現金)」、「ATM(キャッシュカード)」、「インターネットバンキング・テレホンバンキング」の順に振込手数料が安くなっていきます。

振込金額

振込手数料は、振込金額によっても異なります。一般的には3万円以上になると高くなります。

このように振込手数料は、「振込先の金融機関」「振込方法」「振込金額」の組み合わせによって変化します。
さらに、振込先と同一銀行・支店からインターネットバンキングを利用して振り込めばもっとも安く済ませることができます。この方法を利用した場合、多くの都市銀行では振込手数料が無料になります。

振込手数料を節約するにはどうすればいい?

上記のように振込手数料は、振込先と同一支店口座開設やインターネットバンキングの利用によって安く済ませることが可能です。

しかし、様々な理由で同一支店口座を開設することが困難であったり、なかにはインターネットが苦手という人もいるでしょう。そのようなケースでも振込手数料を節約するには以下のような方法があります。

自動引き落としサービス

管理会社など家賃の支払先が自動引き落としサービスを行っていれば、自分で毎回振り込むよりも手数料が安くなるケースがあります。また、このサービスを利用できれば家賃を支払い忘れるリスクも回避できます。

ただし、家賃の支払先がこのサービスに対応していない場合は、自分で直接金融機関に「自動送金サービス」を申し込む必要があり、別途取扱手数料がかかるので、通常の振込よりも余計に費用がかかってしまいます。

各金融機関の優遇サービス

都市銀行をはじめとする各金融機関では、独自の条件をクリアした顧客に対して振込手数料無料サービス(他行宛含む)などを行っています。独自の条件とは、指定クレジットカードの毎月利用、給与振込口座の開設などです。

ネット銀行

ネット銀行の多くは、一般的な銀行と比べて振込手数料が大幅に安く設定されています。なかには他行宛であっても無料に設定しているところもあります。
ただし、月間無料回数が月末残高によって決まるなど、各ネット銀行によってサービス内容が異なるので、よく比較検討することが必要です。

クレジットカード払い

最近は、家賃のクレジットカード払いを受け付ける管理会社や貸主も存在します。このサービスを行っている物件を借りることができれば、毎月振込手数料を負担することがないうえにポイントが貯まり、さらに自動引き落としサービス同様、家賃の支払い忘れもなくなります。

ただし、このようなケースはまだまだ少数派です。利用しようと思っても対応していない場合があるので、対応しているかどうかを確認しておく必要があります。

家賃のクレジットカード払いに関しては「賃貸の初期費用や家賃はクレジットカード払いできる?ポイント還元はどうなる?」で解説しています。

まとめ

以上のように、賃貸契約の仲介手数料は不動産会社が提供するサービスの対価として借主が支払うものです。しかしその額は法律で上限が定められており、それ以上は負担する必要はありません。仲介手数料がかからない物件もあります。

また、家賃の振込手数料も一般的には借主が負担するものですが、貸主の都合によって増額となった場合は貸主負担となったり、インターネットバンキングなどで振込手数料を無料にすることもできます。

この2つを把握した上で、理想の物件探しをスタートさせましょう。